quote:自暴自棄なほどの非難と不満はさておき,アップル社のインテル社CPUへの移行はおおむね歓迎されている。だが普通のPCと異なり,マックは中古が高値で買い取られ,長く所有する人も多い。5年前の450MHzのG4キューブは,OS Xのパンサーとタイガーによる性能向上もあっていまでも働いている。しかし,今年PowerPCのマックを買って,誰が2010年にそれと同じことを云えるか? 2010年には,PowerPC用マックのソフトやドライバーが作られることは難しいだろう。これは,「オズボーン・エフェクト」かもしれない。この言葉は,PCの先駆者のひとりであるアダム・オズボーンが,出荷前に後継機種を発表し,6ヶ月後に会社を潰したことに由来する。つまるところ,あなたは今年,PowerPCのマックを買うだろうか?
個人的にはCPUがIBMだろうがインテルだろうがたいして感慨はない。だが,マックの始まりでケンカを売った(過去記事)IBMのチップをずっと使い続けて,その比較対象としてけなし続けてきたインテルのチップに鞍替えする姿は,ややみすぼらしい。IBMが普通のPCメーカーに落ち,そこからも転落して新しい姿を模索しているような状況をみると,インテルもそうなる予感? と云うか記事中にもあるが,ここ数年はずっとチップ速度でAMDの後塵を拝し,チップのロードマップはクラッシュをし続けている。また,AMDのx86-64チップセットとの互換を受け入れざるを得ない,屈辱の状況に追い込まれているようにみえるんだけど。それを選ぶアップルは,IBMよりマシというだけの判断なのだろうか? 本当に将来をみすえているか,疑わしい。
無駄はよいかと訊かれれば,多くの人はダメだと云うはずだ。その無駄によって,マックのレベルは割り引くことが必要になる。普通に考えてわかるように,インテル用のすべてのソフトがそろうまでは,ソフトが動作しないか,(エミュレーション動作によって)速度が低下する可能性が大きい。すべて無駄だ。ソフト開発者はPowerPC用とインテル用の両方に対応できるようにユニバーサル・バイナリにするのがデフォルトになるだろうが,それも本来は必要でない。無駄だ。ただでさえマックは,OS9までのクラシック環境→マックOS Xの大転換があり,その無駄を引きずっているシーンも残っている。開発者のなかには,またかよ! と思う人がいてもおかしくはない。そして,市販ソフトを使っている人は,ほとんどがまたアップグレード料金を払わされることになる。無駄だ。
だが無駄には,よい無駄とホントに無駄な無駄の2種類があるはずだ。インテルチップへの移行は,どっち? 記事中にある「オズボーン・エフェクト」の当事者だったアダム・オズボーン氏は,まだIBMがPC事業に参入する前に,PCを売り出した。画面もキーボードも(フロッピー)ドライブもすべてをひとつに小さくまとめ,しかも最初からOSはもちろん,表計算やワープロ,開発言語のベーシックなどのソフトも最初からバンドルされている現在のiMacのような「オズボーン1」と云う機種を大ヒットさせた。だが,MS-DOSが動作するという触れ込みの次世代機を発表すると一気に現行機種は売れず,次世代機を待つ人だけになった。でもまだ全然出荷の準備ができていなかったため,そこで破産。次世代機があれば,現行機種のすべては無駄になると判断されたわけだ。まぁ現代でそんなあっさりことが動くことはないのは当然だけど,でも,小さな無駄による鬱屈は,ユーザーの気持ちにたまってくるものだ。しかもそれがホントに無駄な無駄だと,頭をもたげてくるのも早まる。さて。(参考:Osborne 1 computer)
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